大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和23年(れ)1874号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人丸山勇之助上告趣意第一點、第二點及び第四點について。

本件において、僞造せられた私文書の発行名義は、英文で第一騎兵師團庶務課長ジー・エム・ホワイトとなっている。記録によれば、庶務課長ジー・エム・ホワイトは、米軍第一騎兵師團には勤務していないで、同師團には、エヌ・シー・ホワイトという少佐が勤務している。そこで、上告論旨は、庶務課長ジー・エム・ホワイトは全然架空な人物であるから、米軍第一騎兵師團発行の文書とはいえないと主張している。しかし、文書僞造罪は、法律上關係ある事実について、文書の真正に對する公の信頼性を害する危險がある場合に成立するものである。本件において、米軍第一騎兵師團が日本に実在せるものであることは顕著であり一般に知られている(記録に依れば、判示の「ジョンソン航空隊」は日本に実在しており、又米軍第一騎兵師團の勤務員の中には現にホワイト少佐というのがいる位である)から、たとい假りに庶務課長ジー・エム・ホワイトは架空の人物であるとしても、本件文書の形式及び内容は、普通一般の人をして米軍第一騎兵師團発行の真正の文書と誤認せしめる可能性があり、文書の真正に對する公の信頼性を害する危險があることは、火を見るよりも明らかである。從って原審が私文書僞造罪として處罰したのは當然であって、論旨は理由がない。

(その他の判決理由は省略する。)

よって、舊刑訴第四四六條に從い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 真野 毅 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例